工場の中から2011年02月09日 22時49分02秒


手漉き模様の襖紙も伝統という枠から離れたとたん、アートとなる可能性を持つ。

掛け軸をかけていた床の間に

ただ柄の形・色を楽しむのではなく、漉き模様ならではの味わい。
水の力を借りたさりげない地模様である雲肌がその役目を担う。

このようなモダンな柄も普段の技術から普通にできてくるもの。
技術は手だけでできるものではない。普段の感覚がそこに形となって出てくるから、形だけを考えるデスクワークとは根本的に違ってくる。

手の動きに素直になると、だんだん色が無くなってくるね。
これらは最初に私がその場で実際に漉いてみる。そして日頃現場で頑張るわが社の漉き手に預けておくと、次第に進化して柄がひとり立ちしてゆく。柄が育つ瞬間である。自然にまかせた育成は模倣という人工的なものだけで育つものとはたくましさが違う。

かなり柄の冒険を試みたこのパネル、和風の伝統的な空間に突如現れる刺激的な柄も、その場で実際に経験するとそれほど違和感は無い。しばらくすると以前からそこにあるような自然な存在感が滲み出してくる。
形だけをまねても、本物にはなりえない、これが天に恥じない「心の紙」。