貼り場2011年06月03日 20時54分33秒


今日は親戚の葬式ということでこの貼り場担当がお休み、久しぶりの貼り場。
これは昨日漉いた紙を今朝圧搾して水分を抜いたもの。この押し加減で今日の仕事の質が変わる。今日は布を介した貼りなので水分は多め。普段は布を外して貼るのでしっかり押さないと紙が柔らかくなり、ちょっとしたゴミなどで紙を破くこともある。

年季の入った板、たぶん40年以上使っている。この周りにうすめた糊を付け、水気を含んだ紙を一枚ずつ貼ってゆく。中には私より年上の板も。ということはこの貼り場に入って20年ちょっとの私はまだまだひよっこだ。

レザー刷毛とよばれる道具。しっかり圧力をかけて貼りこむ。薄い紙や小さい紙では普通の刷毛でも充分だがこの襖という大きくて厚い紙には普通の刷毛の力では貼り込めない。

四隅をしっかり糊で貼りつけた紙はへらを使わないとはがせない。
このへらも手作り。本物の職人は道具も基本的に自分で作る。

貼り込まれている板は銀杏の板。なめらかな表面を持ち、板にとって過酷な湿潤乾燥の繰り返しである紙漉きの道具としては最適なもの。しかし一枚では不可能な大きさである襖用の板はどこかで継ぎ合せているために多少の継ぎ目は出てしまう。この板を作る技術も残していかないといけないのだが仕事が激減した現実は厳しい。この継ぎ合せを含めた板の中の紋様を板目といってこれこそが手漉きの証だったが、金属板で乾燥される機械漉きのピカピカの表面と比べられ、邪魔なものとしてしか扱われられない。年季の入った板の出す味はいいものなんだが・・・つくづく残念。

重い板を乾燥室から引き出して乾燥した紙をはがし貼り込み、裏返してもう一度とこの繰り返し。漉き場を女性に任せている越前で貼り場は基本的に男の作業。これをやると夏場は汗をかき、とにかくごはんがおいしい。そしてもちろん晩酌も・・・かみと暮らす毎日