受け継ぐこと2014年03月17日 20時53分58秒


老夫婦二人の工場、すでに紙を漉くこともなくなって

そこに豪雨被害。泥の後が今でも残る

このコンクリート製の舟も濁流に浮いたそうだ

ぎりぎりで水につかることなく残った乾燥板
明後日、ここの工場は取り壊し。その前にこの板を引き取らせていただいた

うちの工場と違って無地を漉いていたので汚れもなくきれいな板、大事に使われていたことがわかる。

圧搾機の上にそびえる欅の大木、御神木のような神々しさがある
まだまだ使えそうだが運ぶ手間などの関係でこれは引き取り手がなく、処分される。

残念という言葉も時代に飲み込まれる現実

これが今の私、HIRYU-RING-GRADETION、制作途中も面白い表情
今月中にあと40枚、その他のHIRYUなど20日までに十数枚、目一杯の受注

この紙は板を使うことがなく、漉いているのは私一人

圧搾機や乾燥板の必要な手漉き襖紙、値上げ前の受注は一部を除きほとんど来ることはなく、受注分を漉き終え、今日は在庫分

注文の少ない襖にかかる職人は5人、一人でもがくアンバランスな毎日

それでも襖を漉き、板に貼る


本日出席した大企業のニーズ説明会、最後の名刺交換で「手漉きの襖を漉いています」との自己紹介、若手の担当者「紙などの素材の商材は必要としていません」

今の日本に必要とされていない襖紙をどうこうする話など最初から期待していないのに

これが現実、生活に必要なものだけに限定した新しいニーズなんて見つかるものなのか

無味乾燥な会社のパンフを見て苦笑い

まだまだやれること、やらないといけないことはありそうだ

                かみを引き継ぐ

                     滑らかな銀杏板、大切に使わせていただこう